
簿記を学んでいると、初見ワードがたくさん出てきますよね。
そこで今回は、その中の一つである「予定配賦」について説明していきます。

聞きなれない言葉ですが、
「ふーんそうなんだ」
くらいで覚えてもらえればOKです。
そもそも予定配賦とは
予定配賦とは、簡単に説明すると以下の通りです。
2.実際に1年間やってみて、実績値を出す
3.1と2を比較し、差額を調整する
これと対照的なワードとして、実際に発生した金額を計上する”実際配賦”があります。

え?それなら実際配賦の方が楽じゃない?
なんでわざわざ期首に予定額を出すなんて面倒なことするの?

たしかに、年度末に結果だけ見れば同じですね。
ですが、ちゃんと理由があるんです。
実際配賦のメリット・デメリット
実際配賦のメリットは、文字通り実際にかかった金額を把握できることです。
反対に、デメリットもあります。
たとえば5月に製造間接費がいくらかかったかは、5月末にならないと計算できません。
②実際に発生する金額は変動する
同じ製品を製造していても、製造間接費の金額は毎月変わってしまいます。

会社側からしたら、
「月末まで経営判断が出来ない」
という状態は危険ですよね。
下手したら致命傷になりかねません。
予定配賦はデメリットを解消してくれる
予定配賦を使うと、期首に「ある合理的な基準をもとに計算された金額」を割り振ることが出来ます。
そうすることで経営者側は「1年間で大体これくらい金額がかかるだろう」と分かるため、
経営判断が柔軟にできます。
つまり、走りながら考えられる状態になるので、実際配賦のデメリットを解消してくれます。

この「ある合理的な基準に基づいて割り振る」
ことを「配賦(はいふ)」といいます。
これ以上は概念や理論の話になってしまうので、
「ふ~ん、要は経営するのに便利なのね」
くらいでOKです。
例題を解いてみよう
では例題を解いてみましょう。
基準操業度は600時間(作業時間)である。また、当月の作業時間は次のとおりである。
作業時間 15時間(A部門)
45時間(B部門)
問1 当月の仕訳をしなさい。
問2 当月の製造間接費の実際発生額は270,000円であった。月末処理の仕訳をしなさい。
まず、予定配賦率(=合理的な基準となる金額)を求めます。
予定配賦率は以下の計算式で求めます。

基準操業度とは、要するに「どれだけ忙しいかを数値化してみた」
ということです。
例えば映画館なら、ヒット作が上映されれば基準操業度は上がります。
逆にそんなに話題になってなければ、基準操業度は下がります。
そのため、予定配賦率は次の通りです。
300,000(円)÷(15+45)(時間)=5,000円
予定配賦率を求めてから、問1を解きます。
当月の作業時間は「A部門が15時間、B部門が45時間」です。
これに先ほど求めた予定配賦率をかけます。
A部門:15(時間)×5,000(円)=75,000(円)
B部門:45(時間)×5,000(円)=225,000(円)
合計:75,000+225,000=300,000(円)
よって、問1の答えはこうなります。
(借方) | (貸方) |
---|---|
(仕掛品)300,000 | (製造間接費)300,000 |
次に問2を見てみましょう。
今月は300,000円かかることを予想していましたが、実際は270,000円でした。

経営者側としては
「お!出ていくお金が少なくて済んだ!ラッキー」
ですね。これを「有利差異(ゆうりさい)」と言います。
このように予定額と実際額で差が出た場合、「製造間接費配賦差異」という勘定科目で処理します。
今月は
300,000(円)-270,000(円)=30,000(円)
の差が出ました。
有利差異(予定額より少なく済んだ場合)、以下のように仕訳します。
これが問2の答えです。
(借方) | (貸方) |
---|---|
(製造間接費)30,000 | (製造間接費配賦差異)30,000 |
ちなみに、問1と問2の仕訳を足し合わせてるとこうなります。
これが当月の仕訳です。
(借方) | (貸方) |
---|---|
(仕掛品)300,000 | (製造間接費)270,000 |
(製造間接費配賦差異)30,000 |
まとめ まずは予定配賦率をもとめよう
予定配賦をすることで、ある基準のもとで大まかな金額を把握することが出来るので、柔軟な経営判断を行うのに役立ちます。
問題を解くときは、まずは予定配賦率をもとめるのが合格の第1歩です。
(基準となる金額) (1年間の見込み額) (忙しさを数値化したもの)