【簿記2級】連結会計の解き方とコツを解説

連結会計 商業簿記
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簿記2級の中でも、連結会計はラスボス級の難易度です。
独学では鬼門といってもいいでしょう。
とはいえ簿記2級では問2で出題されることが多く、合格するためにはスルー出来ないですね。

この記事では、連結会計の解き方について解説していきます。

ともちよ
ともちよ

私も独学で合格した身なので、かなり苦労しました。
なるべく分かりやすく説明していきますね。

完答ではなく部分点を狙いに行こう

それじゃ解説にならないんじゃ・・・

ともちよ
ともちよ

お気持ちはよく分かります。
でも、目的はあくまで「試験に合格すること」です。

最初に書いたとおり、連結会計はラスボス級の難易度です。
ここに多くの時間を割くよりも、工業簿記などの得点しやすい分野をしっかり解く方が合格に近づきます。

また、問2で連結会計が出題されないこともあります。
そのため、ここは全問正解を目指さず、分かる所だけ答えて部分点を狙うのがいいと思います。

ともちよ
ともちよ

簿記2級は100点中70点以上で合格です。

逆に言えば”30点分間違えてもいい”ということですね。

問1の仕訳や問4、5の工業簿記に時間を割きましょう。

ここからは、問2で連結会計が出題された場合の解き方について解説していきます。

部分点が取りやすいのはここ!

結論から申し上げると、連結会計で部分点が取りやすいのは以下のとおりです。

・のれん償却
・内部取引の消去(売掛金、売上など)
・固定資産売却益の消去
ともちよ
ともちよ

順番に解説していきましょう。

のれん償却

問題文には
「のれんは発生年度の翌年から10年にわたり償却する。」
のように、のれんに関する記述が必ずといっていいほどあります。

のれんは連結1年目にも仕訳するので、のれん償却が終わるまで繰り返し仕訳されます。

とくに定額法で償却する場合は、1年目の仕訳がそのまま使えます

(借方)(貸方)
(のれん償却)○○(のれん)○○
ともちよ
ともちよ

そしてここが混乱するポイントなのですが、連結会計には「問題文に書かれてないルール」があるんです。

その一つがこれ

もし連結精算表に「のれん償却」の科目が無ければ、「販売費及び一般管理費」に転記する
ともちよ
ともちよ

たとえば、のれん償却が100円だったとします。

(借方)(貸方)
(のれん償却)100(のれん)100

そして連結精算表に「のれん償却」がない場合、このように記載します。

科目修正・消去
借方
修正・消去
貸方
のれん100
販売費及び一般管理費100

内部取引の消去(売掛金、売上など)

親会社が子会社と取引をすることを内部取引と言います。

連結会計では、ここにも「書いてないルール」が登場するんです。

内部取引は相殺・消去する
ともちよ
ともちよ

例えば親会社(P社)から子会社(S社)に商品を200円(掛け払い)で販売していた場合、それは内部取引になるので消去します。

(借方)(貸方)
(買掛金)200(売掛金)200

これを連結精算表に記載します。

科目修正・消去
借方
修正・消去
貸方
売掛金200
買掛金200
ともちよ
ともちよ

固定資産売却益の消去

固定資産の売却も内部取引になるので、相殺・消去します。

例えばP社がS社に土地(簿価150円)を300円で売っていたとすると、以下のように仕訳します。

(借方)(貸方)
(土地売却益)150(土地)150
”売却益”の消去
ともちよ
ともちよ

ここでも「書いてないルール」が発動します。
「土地売却益」は突発的に出た利益、つまり「特別利益」なので

「土地売却益」の科目が無かったら「特別利益」に転記する

そのため、連結精算表には次のように書きます。

科目修正・消去
借方
修正・消去
貸方
土地150
特別利益150
ともちよ
ともちよ

つまづくポイント第1位「非支配株主持分」

非支配株主持分」は、連結会計でみんながつまづくポイントです。
S社(子会社)からP社(親会社)に商品の売買などがあるとき(アップストリーム)に出てきます

例として、P社はS社の当期純利益は500円で、400円の配当を出しているとしましょう。
P社はS社の株式の60%を取得しているとします。

・S社の当期純利益は500円なので、60%はP社のモノ、残り40%は非支配株主のものです。
よって以下のように仕訳します。

(借方)(貸方)
(非支配株主に帰属する当期純損益)200(非支配株主持分)200
500円×40%=200円が「非支配株主持分」になります。

・S社は400円の配当金を出しています。これも60%はP社のモノ、残り40%は非支配株主のものです。

(借方)(貸方)
(受取配当金)240(剰余金の配当)400
(非支配株主持分)160
400×40%=240円は「非支配株主持分」のもの
ともちよ
ともちよ
ともちよ
ともちよ

例題を解いてみよう

では、実際に問題を解いてみましょう。

次の資料にもとづいて、当期の連結財務諸表を作成するために必要な開始仕訳を示しなさい。当期は×4年4月1日から×5年3月31日までの1年間とする。
1.P社は×3年3月31日にS物産㈱の発行済み株式の60%を3,800円で取得し、支配を獲得した。
2.×3年3月31日のS物産㈱の貸借対照表上、資本金3,000円、利益剰余金2,000円が計上されていた。
3.のれんは発生年度の翌年から10年にわたり定額法により償却する。
4.×3年4月1日から×4年3月31日のS物産㈱の当期純利益は500円で、400円の配当を出している。

うわ~もうワケ分からん…

ともちよ
ともちよ

さすが、ラスボス級の難易度ですね。

1つずつひも解いていきましょう。

まず、イベントが起きた順に時系列を並べていきましょう。

×3年3月31日
(支配獲得日)
×4年3月31日
(連結1年目)
×5年4月1日
(連結2年目)
P社がS物産㈱を3,800円で取得
(60%)
S物産㈱
・資本金3,000円
・利益剰余金2,000円
のれん償却
S物産㈱ 
・当期純利益500円
・400円の配当
当期の連結財務諸表を作成
するための開始仕訳を作る
(この問題の解答)

結論から書くと、連結会計は以下のステップで解いていきます。

Step1 支配獲得日の状況を記入する
Step2 連結1年目の仕訳をする(Step1の開始仕訳+連結1年目の仕訳)
Step3 連結2年目の仕訳をする(Step2の開始仕訳+連結2年目の仕訳)

Step1 支配獲得日の状況を記入する

×3年3月31日
(支配獲得日)
×4年3月31日
(連結1年目)
×5年4月1日
(連結2年目)
P社がS物産㈱を3,800円で取得
(60%)
S物産㈱
・資本金3,000円
・利益剰余金2,000円
のれん償却
S物産㈱ 
・当期純利益500円
・400円の配当
当期の連結財務諸表を作成
するための開始仕訳を作る
(この問題の解答)

支配獲得日の仕訳をする

まず、支配獲得日(例題だと、×3年3月31日)の状況を仕訳します。
※仕訳の都合上、S物産㈱を”S社”と表記します。

ともちよ
ともちよ

P社は60%、つまり過半数(51%以上)の株式を取得しています。

そのためP社が”親会社”、S物産は”子会社”になります。

・P社(親会社)・・・S社株式を3,800円で取得(発行済み株式の60%
・S社(子会社)・・・資本金3,000円、利益剰余金2,000円

簿記ではこうした場合、「投資(S社株式)」と「資本(S社の純資産)」を相殺消去します。
(これを資本連結といいます)

(借方)(貸方)
(資本金)3,000(S社株式)3,800
(利益剰余金)2,000

支配獲得日の”非支配株主持ち分”を計算する

また、P社が持っている株式は60%なので、残り40%の”非支配株主持分”(純資産)についても仕訳します

(借方)(貸方)
(資本金)3,000(S社株式)3,800
(利益剰余金)2,000(非支配株主持分)2,000
※(資本金3,000+利益剰余金2,000)×40%
取得した株式が”100%未満” → ”非支配株主持分”が発生します

支配獲得日の”のれん”を計算する

また、差額は”のれん”(資産)で処理します。
そのため、支配獲得日の仕訳はこうなります。

(借方)(貸方)
(資本金)3,000(S社株式)3,800
(利益剰余金)2,000(非支配株主持分)2,000
(のれん)800
×3年3月31日(支配獲得日)の仕訳が完成です!

Step2 連結1年目の仕訳をする

さて、×3年3月31日にS社を支配獲得(子会社に)しました。

×3年4月1日~×4年3月31日は連結1年目ということになります。

ともちよ
ともちよ

当期(×4年4月1日から×5年3月31日)から見ると
・S社を支配獲得(×3年3月31日)…前々期
・連結1年目(×3年4月1日~×4年3月31日)…前期
です。

連結1年目の処理は、次の手順で行います。

1.開始仕訳をする
2.のれんを償却する
3.子会社の当期純利益(損失)を振り替える
4.子会社の配当金の修正をする

では早速やっていきましょう。

×3年3月31日
(支配獲得日)
×4年3月31日
(連結1年目)
×5年4月1日
(連結2年目)
P社がS物産㈱を3,800円で取得
(60%)
S物産㈱
・資本金3,000円
・利益剰余金2,000円
のれん償却
S物産㈱ 
・当期純利益500円
・400円の配当
当期の連結財務諸表を作成
するための開始仕訳を作る
(この問題の解答)

Step1の開始仕訳をする

連結財務諸表(親会社+子会社)は、当期の個別財務諸表をもとに作成されます。
つまり、Step1で仕訳した連結財務諸表(親会社+子会社)は次年度の仕訳には反映されないんですね。

そのため、年度が変わったらまず最初に、前期までの連結修正仕訳をもう1回やる必要があります
これを開始仕訳といいます。

ともちよ
ともちよ

「え?なんで??メンドくさい」

と思いますよね。でも、

「そういうルールになってるんだ」

くらいでOKです。

(借方)(貸方)
(資本金)3,000(S社株式)3,800
(利益剰余金)2,000(非支配株主持分)2,000
(のれん)800
連結1年目の開始仕訳

のれんを償却する

開始仕訳が出来たら、次にのれんを償却します。

ともちよ
ともちよ

上の表より、のれんは800円ですね。

問題文より「のれんは発生年度の翌年から10年にわたり定額法により償却する」
ということで、償却額は
800(円)÷10(年)=80(円)です。

(借方)(貸方)
(のれん償却)80(のれん)80
のれんを償却します

子会社の当期純利益(損失)を振り替える

次に、子会社の当期純利益(損失)を振り替えます。
問題文より「4.×3年4月1日から×4年3月31日のS物産㈱の当期純利益は500円で、400円の配当を出している。」
とあるので、S社(S物産㈱)の純利益は500円ですね。

ともちよ
ともちよ

S社の利益を全額計上したくなりますが、思い出してください。

P社が保有している株式は60%ですよね。

そのため、残り40%の”非支配株主持分”についての仕訳が必要です。

問題文に書かれていませんが、P社が保有する株式が100%でないなら
この仕訳は必ずやる必要があります。

子会社が当期純利益(損失)と配当金を出している

P社がS社の株式取得数が100%でないなら、非支配株主持分の仕訳をしましょう

例題より、非支配株主持分は40%、純利益は500円なので
500(円)×40(%)=200(円)
の利益が出ているので、以下のように仕訳します。

(借方)(貸方)
(非支配株主に帰属する当期純損益)200(非支配株主持分)200
×3年4月1日~×4年3月31日 非支配株主持分の「損益」の仕訳です
ともちよ
ともちよ

子会社が利益を出している場合の仕訳は上記のとおりです。
この借方・貸方の勘定科目は丸ごと覚えておきましょう。

ちなみにS社が損失を出していた場合、仕訳は逆になります。

子会社の配当金の修正をする

最後に、子会社の配当金の修正をします。
問題文より「4.×3年4月1日から×4年3月31日のS物産㈱の当期純利益は500円で、400円の配当を出している。」
とあります。

ともちよ
ともちよ

ここで全額を計上したくなりますが・・・

そう!”非支配株主持分”の仕訳をします。

くり返すようですが、大事なのでもう1度いいます。

子会社が当期純利益(損失)と配当金を出している

P社がS社の株式取得数が100%でないなら、非支配株主持分の仕訳をしましょう

例題より、非支配株主持分は40%、配当金は400円なので
400(円)×40(%)=160(円)
なので、以下のように仕訳します。

(借方)(貸方)
(受取配当金)240(剰余金の配当)400
(非支配株主持分)160
×3年4月1日~×4年3月31日 非支配株主持分の「配当金」の仕訳です

これで前期までの仕訳がすべて終わり、下準備は完了です!

連結1年目の仕訳をまとめます。

(借方)(貸方)
(のれん償却)80(のれん)80
(非支配株主に帰属する当期純損益)200(非支配株主持分)200
(受取配当金)240(剰余金の配当)400
(非支配株主持分)160
×3年4月1日~×4年3月31日(連結1年目)の仕訳まとめ

もうお腹いっぱい・・・

ともちよ
ともちよ

あと少し!ファイト!!

Step3 連結2年目の仕訳をする

×3年3月31日
(支配獲得日)
×4年3月31日
(連結1年目)
×5年4月1日
(連結2年目)
P社がS物産㈱を3,800円で取得
(60%)
S物産㈱
・資本金3,000円
・利益剰余金2,000円
のれん償却
S物産㈱ 
・当期純利益500円
・400円の配当
当期の連結財務諸表を作成
するための開始仕訳を作る
(この問題の解答)

さて、ここまでの仕訳を振り返っていきましょう。

(借方)(貸方)
(資本金)3,000(S社株式)3,800
(利益剰余金)2,000(非支配株主持分)2,000
(のれん)800
1.連結1年目の開始仕訳
(借方)(貸方)
(のれん償却)80(のれん)80
2.のれんの償却
(借方)(貸方)
(非支配株主に帰属する当期純損益)200(非支配株主持分)200
3.子会社の当期純利益(損失)の振り替え
(借方)(貸方)
(受取配当金)240剰余金の配当)400
(非支配株主持分)160
4.子会社の配当金の修正

ここでようやく、例題で求められている
「当期の連結財務諸表を作成するために必要な開始仕訳」
を求めるための材料が出そろいました。

Step2の開始仕訳を行う

当期の連結財務諸表を作るには、前期までの開始仕訳を行います。

ともちよ
ともちよ

つまり、前期までの連結修正仕訳を

もう1回やるんですね。

そして連結会計を作るときは、こんなルールがあります。

前期までの仕訳のうち、利益に関係する所は「利益剰余金」で仕訳する

うわぁぁぁ~

もうムリ~

ともちよ
ともちよ

大丈夫!当てはまるところはマーカー引いたから!!

上の仕訳でアンダーラインを引いてあるところを利益剰余金に振り替えます。

これらをすべて足し合わせれば、連結2年目の開始仕訳の完成です。

(借方)(貸方)
(資本金)3,000(S社株式)3,800
(のれん)720(非支配株主持分)2,040
(利益剰余金)2,120
連結2年目の開始仕訳が完成!

マーカーを引いた勘定科目はすべて「利益剰余金」で処理します。

(借方)2,000+80+200+240=2,520
(貸方)400

2,520-400=2,120 ですね。

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まとめ Step1~3の流れをマスターしよう

連結会計はラスボス級の難易度なので、まずは部分点を取りにいくのがいいでしょう。

ともちよ
ともちよ

出題された場合は、以下のステップで解いていきます。

Step1 支配獲得日の仕訳をする
Step2 連結1年目
         ・Step1が丸ごと開始仕訳
   ・のれん償却
   ・子会社の当期純損益の振替え&配当金振分け
Step3 連結2年目
         ・Step2が丸ごと開始仕訳
   ・のれん償却
   ・子会社の当期純損益の振替え&配当金振分け

こうして連結何年目になっても、同じように仕訳していきます

ここまで長旅でしたね。読んでいただきありがとうございます。
ここまで読めたあなたは、独学で必要な”継続力”や”忍耐力”がある方だと思います。

ともちよ
ともちよ

必ず結果は出ると信じていますよ!ファイト!!

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