【簿記2級】連結会計(アップストリーム)の解き方を解説

タイトル 商業簿記
記事内に広告が含まれている場合があります。
アイキャッチ画像

連結会計は簿記2級のラスボスです。

第2問でここが出題されたときの絶望感はヤバいですよね。

でもちょっと待って!あきらめるのはまだ早いです。
逆に言えば、ここを攻略すれば合格に大きく近づきます

ここでは多くの受験生がつまづく連結会計(アップストリーム)の解き方について解説していきます。

ともちよ
ともちよ

アップストリームとは

アップストリームとは、子会社から親会社に商品を販売することです。
反対に、親会社から子会社に商品を販売することをダウンストリームと言います。

ともちよ
ともちよ
ともちよ
ともちよ

なんと簿記の世界には、こんなルールがあるんです。

・親会社が子会社に販売(ダウンストリーム)…相殺消去でOK
・子会社が親会社に販売(アップストリーム)…相殺消去&非支配株主持分の仕訳

この「非支配株主持分の仕訳」こそが、連結会計アップストリームの「つまづきポイント」なんです。

ポイントは「非支配株主持分」の仕訳

画像
ともちよ
ともちよ

例えば、親会社が子会社の株式の60%を持ち、支配しているとしましょう。
残り40%非支配株主持分」です。

図解

ではここで問題です。

親会社は子会社の発行済み株式の60%を保有しています。
子会社が親会社に商品を売り、子会社が利益を得ました。
簿記の面から見て、子会社の利益は誰のものでしょうか?
ともちよ
ともちよ

親会社が決算をする時、子会社の利益も連結します。

上記の問題の答えは60%が親会社のもの、残り40%は「非支配株主持分」のものです。

ともちよ
ともちよ

子会社が商品を売り上げたので、その仕訳をします。

(借方)(貸方)
(商品)〇〇(売上原価)○○
ここまでは普通の仕訳

さて、ここからがポイントです。
まだ40%の「非支配株主持分」が残ってますよね?

アップストリームの場合、簿記の世界にはこんなルールがあるんです。

・利益に影響する項目(損益項目)の仕訳をしたら、さらにもう1つ「非支配株主持分」の仕訳を追加する。
・損益項目の反対側には「非支配株主に帰属する当期純利益」を使う。
利益に影響する項目非支配株主持分の仕訳
手形取引あり
未実現利益の消去
(商品売買など)
あり
貸倒引当金あり
固定資産の売却あり
株式の取得あり
債権・債務の相殺消去
(売掛金など)
なし
この表は超大事!あとあと役に立ちます
ともちよ
ともちよ

先ほどの仕訳に戻りましょう。
「売上原価」は損益項目で、貸方にありますね。
この金額の40%、つまり「非支配株主持分」を追加で仕訳します。

反対側の借方は「非支配株主に帰属する当期純利益」という純資産の勘定科目で仕訳します。
相手科目は「非支配株主持分当期変動額」(純資産)です。

(借方)(貸方)
(商品)○○(売上原価)○○
※損益項目
(非支配株主に
帰属する当期純利益)
○○×40%
(非支配株主持分)○○×40%
この仕訳は超大事です。覚えておきましょう

解き方にはパターンがある

結論から言うと、連結会計は次のパターンで解いていきます。

Step1 支配獲得日の仕訳

Step2 連結1年目の仕訳
    ①開始仕訳
    ②のれん償却
    ③子会社の当期(連結1年目の)純損益の振替
    ④子会社の配当金の修正
    ⑤内部取引の相殺・消去(債権・債務)
    ⑥貸倒引当金の調整
    ⑦前期末の商品に含まれる未実現利益の消去
    ⑧当期末の商品に含まれる未実現利益の消去
    ⑨固定資産を売却した未実現利益の消去
    ※③,④,⑥~⑨がアップストリームの場合、「非支配株主持分」も仕訳する

Step3 連結2年目の仕訳
    ①開始仕訳(Step2の①~④を合体
    ②のれん償却
    ③子会社の当期(連結2年目の)純損益の振替
    ④子会社の配当金の修正
    ⑤内部取引の相殺・消去(債権・債務)
    ⑥貸倒引当金の調整
    ⑦前期末の商品に含まれる未実現利益の消去
    ⑧当期末の商品に含まれる未実現利益の消去
    ⑨固定資産を売却した未実現利益の消去
          ※③,④,⑥~⑨がアップストリームの場合、「非支配株主持分」も仕訳する

・①前年の仕訳のうち「損益項目」は「利益剰余金当期首残高」に振り替える
・⑦前期末の商品は”すべて販売された”と考え、未実現の利益を修正仕訳する
・⑧今期末商品は”すべて売れ残った”と考え、未実現利益を消去する。
利益に影響する項目
(損益項目)
非支配株主持分の仕訳
手形取引あり
未実現利益の消去
(商品売買など)
あり
貸倒引当金あり
固定資産の売却あり
株式の取得あり
子会社の利益あり
債権・債務の相殺消去
(売掛金など)
なし
この表は大事なので何回も出てきます

なぜかというと、③,④,⑥~⑨は株主の利益に影響する項目(損益項目)だからです。

ともちよ
ともちよ
ともちよ
ともちよ

ただでさえ難しい問題ですが、例題を解きながら解説していきましょう。

例題を解いてみよう

(例題)
次の資料に基づいて、P物産㈱の当期の連結精算表を作成しなさい。当期は×4年4月1日から×5年3月31日の1年間である。
【資料】
1.P物産㈱(以下P社)は×3年3月31日に、S食品㈱(以下S社)の発行済み株式の60%を750,000円で取得し、支配獲得した。
2.×3年3月31日のS社には資本金600,000円、資本剰余金100,000円、利益剰余金50,000円が計上されていた。
3.のれんは発生年度の翌年から10年にわたり定額法により償却する。
4.S社は、当期より繰越利益剰余金から50,000円の配当金を出している。
5.前期よりS社はP社に商品を販売している。当期のS社からP社への売上は900,000円、前期と当期の売上総利益率はともに30%である。
6.P社の前期末商品棚卸高のうち200,000円、当期末商品棚卸高のうち225,000円はS社から仕入れたものである。
7.S社のP社に対する売掛金残高は前期末125,000円、当期末187,500円だった。なお、S社は売上債権期末残高に4%の貸倒引当金を差額補充法により設定している。
科目個別財務諸表
P社
個別財務諸表
S社
修正・消去
借方
修正・消去
貸方
連結財務諸表
貸借対照表
売掛金208,500188,000
貸倒引当金12,00016,000
商品775,000490,000
S社株式750,000
のれん
資産合計1,473,500601,000
買掛金307,500205,000
資本金1,500,000600,000
資本剰余金400,000100,000
利益剰余金900,000425,000
非支配株主持分
負債・純資産合計3,107,5001,931,000
損益計算書連結損益計算書
売上高2,300,0001,200,000
売上原価1,700,000875,000
販売費及び一般管理費357,000233,750
営業外収益400,000250,000
営業外費用170,00075,000
当期純利益175,000100,000
非支配株主持分に
帰属する当期純利益
親会社株主に
帰属する当期純利益
株主資本等変動計算書連結株主資本等
変動計算書
資本金当期首残高1,750,000600,000
資本金当期末残高1,750,000600,000
資本剰余金当期首残高200,000100,000
資本剰余金当期末残高200,000100,000
利益剰余金当期首残高650,000275,000
剰余金の配当100,00050,000
親会社株主に
帰属する当期純利益
175,000100,000
利益剰余金当期末残高450,000212,500
非支配株主持分
当期首残高
非支配株主持分
当期変動額
非支配株主持分
当期末残高
単位:円
ともちよ
ともちよ

ここからはP物産を「P社」、S食品を「S社」と表記します。
この問題のゴールは「×5年3月31日時点の連結精算表を完成させること」です。

×3年3月31日×4年3月31日
(前期,連結1年目)
×5年3月31日
(当期,連結2年目)
・S社を子会社化
(60%,750,000円)
・S社の貸借対照表
資本金600,000円
資本剰余金100,000円
利益剰余金50,000円
アップストリーム(S→P)
・(売上総利益率30%)
・P社の前期末商品棚卸200,000円 
・売掛金残高125,000円
(貸倒引当金4%)
・S社配当金50,000円

アップストリーム(S→P)
・売上900,000円
(売上総利益率30%)
・P社の当期末商品棚卸高225,000円
・売掛金残高187,500円
(貸倒引当金4%)
×5年3月31日(連結2年目)までの時系列

それでは解いていきましょう。

ともちよ
ともちよ

支配獲得日の仕訳

×3年3月31日×4年3月31日
(前期,連結1年目)
×5年3月31日
(当期,連結2年目)
・S社を子会社化
(60%,750,000円)
・S社の貸借対照表
資本金600,000円
資本剰余金100,000円
利益剰余金50,000円
アップストリーム(S→P)
・(売上総利益率30%)
・P社の前期末商品棚卸200,000円 
・売掛金残高125,000円
(貸倒引当金4%)
・S社配当金50,000円

アップストリーム(S→P)
・売上900,000円
(売上総利益率30%)
・P社の当期末商品棚卸高225,000円
・売掛金残高187,500円
(貸倒引当金4%)
支配獲得日の仕訳をしよう

まずは支配獲得日の仕訳です。

・P社がS社株式の60%を750,000円で取得
・S社の貸借対照表
 資本金600,000円
 資本剰余金100,000円
 利益剰余金50,000円

ここで注意したいのは、残り40%は「非支配株主持分」ということです。

利益に影響する項目
(損益項目)
非支配株主持分の仕訳
手形取引あり
未実現利益の消去
(商品売買など)
あり
貸倒引当金あり
固定資産の売却あり
株式の取得あり
子会社の利益あり
債権・債務の相殺消去
(売掛金など)
なし
株式の取得は「非支配株主持分」を計算します

つまり
(600,000+100,000+50,000)×40%=300,000(円)
が「非支配株主持分」になります。

差額は「のれん」で処理します。

よって、支配獲得日の仕訳は次のとおりです。

(借方)(貸方)
(資本金)600,000(S社株式)750,000
(資本剰余金)100,000(非支配株主持分)300,000
(利益剰余金)50,000
(のれん)300,000
支配獲得日の連結修正仕訳
ともちよ
ともちよ

連結1年目

続いて連結1年目の仕訳です

続いて、連結1年目の仕訳です。
上記①~⑨の仕訳とアップストリームをやっていきますよ。

開始仕訳

まずは開始仕訳をします。
これをしないと連結会計は始まりません。

前期末の連結修正仕訳をそのまま持ってきます。

(借方)(貸方)
(資本金)600,000(S社株式)750,000
(資本剰余金)100,000(非支配株主持分)300,000
(利益剰余金)50,000
(のれん)300,000
支配獲得日の連結修正仕訳

のれん償却

問題文「3.のれんは発生年度の翌年から10年にわたり定額法により償却する。」より

300,000÷10=30,000(円)

(借方)(貸方)
(のれん償却)30,000(のれん)30,000
のれん償却の仕訳

子会社の当期(連結1年目の)純損益の振替

続いて子会社の当期(連結1年目の)純損益の振替を行います。

ともちよ
ともちよ

問題文「×3年3月31日のS社には資本金600,000円、資本剰余金100,000円、利益剰余金50,000円が計上されていた。」

科目個別財務諸表
P社
個別財務諸表
S社
修正・消去
借方
修正・消去
貸方
連結財務諸表
利益剰余金当期首残高650,000275,000
問題文の表より抜粋(連結2年目の期首)

このことから、連結1年目(×3年4月1日~×4年3月31日)に子会社が純利益を上げていたことが分かります。

・×3年3月31日(連結0年目の期末)…利益剰余金50,000円
・×4年4月1日(連結2年目の期首)…S社の利益剰余金275,000円
ともちよ
ともちよ

そして子会社の利益は損益項目なので、「非支配株主持分」を計算しますね。

利益に影響する項目
(損益項目)
非支配株主持分の仕訳
手形取引あり
未実現利益の消去
(商品売買など)
あり
貸倒引当金あり
固定資産の売却あり
株式の取得あり
子会社の利益あり
債権・債務の相殺消去
(売掛金など)
なし
子会社の利益は「非支配株主持分」を計算します

(275,000-50,000)×40%=90,000円
が「非支配株主持分」となります。

ともちよ
ともちよ
(借方)(貸方)
(非支配株主に帰属する当期純利益)90,000(非支配株主持分)90,000
連結1年目の子会社の純損益の振替

子会社の配当金の修正

次は子会社の配当金の修正です。
問題文を読むと、連結1年目はこの仕訳はありません。

「4.S社は、当期より繰越利益剰余金から50,000円の配当金を出している。」

ともちよ
ともちよ

内部取引の相殺・消去(債権・債務)

おつぎは内部利益の相殺・消去です。

問題文「7.S社のP社に対する売掛金残高は前期末125,000円(中略)、S社は売上債権期末残高に4%の貸倒引当金を差額補充法により設定している。」とあるので、これを消去します。

(借方)(貸方)
(買掛金)125,000(売掛金)125,000
ともちよ
ともちよ
利益に影響する項目
(損益項目)
非支配株主持分の仕訳
手形取引あり
未実現利益の消去
(商品売買など)
あり
貸倒引当金あり
固定資産の売却あり
株式の取得あり
子会社の利益あり
債権・債務の相殺消去
(売掛金など)
なし
子会社の利益は「非支配株主持分」を計算します

貸倒引当金の調整(アップストリーム)

続いて貸倒引当金の調整です。

問題文「7.S社のP社に対する売掛金残高は前期末125,000円(中略)、S社は売上債権期末残高に4%の貸倒引当金を差額補充法により設定している。」より、貸倒引当金を計算します。

125,000×4%=5,000円を貸倒引当金に繰り入れます。

ともちよ
ともちよ
利益に影響する項目
(損益項目)
非支配株主持分の仕訳
手形取引あり
未実現利益の消去
(商品売買など)
あり
貸倒引当金あり
固定資産の売却あり
株式の取得あり
子会社の利益あり
債権・債務の相殺消去
(売掛金など)
なし
貸倒引当金は「非支配株主持分」を計算します

繰り入れる貸倒引当金の40%
5,000円×40%=2,000円
が、「非支配株主持分」になります。

(借方)(貸方)
(貸倒引当金)5,000(貸倒引当金繰入)5,000
※損益項目
(非支配株主に帰属する当期純利益)2,000(非支配株主持分)2,000
貸倒引当金の仕訳

前期末の商品に含まれる未実現利益の消去

×3年3月31日(連結0年目)に支配獲得したので、それ以前の未実現利益はありません。
よってこの仕訳はなしです。

当期末(連結1年目)の商品に含まれる未実現利益の消去(アップストリーム)

次に、期末商品に含まれる未実現利益の消去をします。

問題文には
「5.前期よりS社はP社に商品を販売している。当期のS社からP社への売上は900,000円、前期と当期の売上総利益率はともに30%である。」
「6.P社の前期末商品棚卸高のうち200,000円、当期末商品棚卸高のうち225,000円はS社から仕入れたものである。」

と書いてあります。

ともちよ
ともちよ

売上総利益率は「商品を売った金額のうち、利益になる%」のことです。

つまり、S社がP社に売った商品に含まれる利益
200,000円×30%=60,000円
を消去するということです。

そして利益を消去するということは…そう、「非支配株主持分」も減らします。
60,000円×40%=24,000円
が「非支配株主持分」です。

(借方)(貸方)
(売上原価)60,000
※損益項目
(商品)5,000
(非支配株主持分)24,000(非支配株主に帰属する当期純利益)24,000
未実現利益の消去(アップストリーム)

固定資産を売却した未実現利益の消去

連結1年目の固定資産売却に関する記述はないため、この仕訳はなしです。

連結1年目の仕訳まとめ

さて、ここまでの仕訳をまとめてみましょう。

(借方)(貸方)
(資本金)600,000(S社株式)750,000
(資本剰余金)100,000(非支配株主持分)300,000
(利益剰余金)50,000
(のれん)300,000
①支配獲得日の連結修正仕訳
(借方)(貸方)
(のれん償却)30,000(のれん)30,000
②のれん償却の仕訳
(借方)(貸方)
(非支配株主に帰属する当期純利益)90,000(非支配株主持分)90,000
③連結1年目の子会社の純損益の振替
(借方)(貸方)
(貸倒引当金)5,000(貸倒引当金繰入)5,000
※損益項目
(非支配株主に帰属する当期純利益)2,000(非支配株主持分)2,000
⑥貸倒引当金の仕訳
(借方)(貸方)
(売上原価)60,000
※損益項目
(商品)5,000
(非支配株主持分)24,000(非支配株主に帰属する当期純利益)24,000
⑧連結1年目の未実現利益の消去(アップストリーム)
ともちよ
ともちよ

連結2年目

×3年3月31日×4年3月31日
(前期,連結1年目)
×5年3月31日
(当期,連結2年目)
・S社を子会社化
(60%,750,000円)
・S社の貸借対照表
資本金600,000円
資本剰余金100,000円
利益剰余金50,000円
アップストリーム(S→P)
・売上225,000円(売上総利益率30%)
・P社の前期末商品棚卸200,000円 
・売掛金残高125,000円
(貸倒引当金4%)
・S社配当金50,000円

アップストリーム(S→P)
・売上900,000円
(売上総利益率30%)
・P社の当期末商品棚卸高225,000円
・売掛金残高187,500円
(貸倒引当金4%)

×5年3月31日(連結2年目)までの時系列

連結1年目の修正仕訳が終わり、ここから連結2年目の修正仕訳を作っていきます。
下準備だけでスゴいボリュームでしたね。ですが、ここからが本題です。

開始仕訳

まずは連結2年目の開始仕訳を作っていきます。
前年までの連結修正仕訳をもう1度行い、末尾に当期首残高を付けます。

ともちよ
ともちよ

そして、開始仕訳の「書かれてないルール」を適用します。

・①前年の仕訳のうち「損益項目」は「利益剰余金当期首残高」に振り替える
(借方)(貸方)
(資本金当期首残高)600,000(S社株式)750,000
(資本剰余金当期首残高)100,000(非支配株主持分当期首残高)300,000
(利益剰余金当期首残高)50,000
(のれん)300,000
①前年度の連結修正仕訳
(借方)(貸方)
(のれん償却)30,000
利益剰余金当期首残高
(のれん)30,000
②のれん償却の仕訳
(借方)(貸方)
(非支配株主に帰属する当期純利益)90,000
利益剰余金当期首残高
(非支配株主持分当期首残高)90,000
③連結1年目の子会社の純損益の振替

④子会社の配当金の修正はないため、①~③を合体したものが連結2年目の開始仕訳です。

(借方)(貸方)
(資本金当期首残高)600,000(S社株式)750,000
(資本剰余金当期首残高)100,000(非支配株主持分当期首残高)390,000
(利益剰余金当期首残高)170,000
(のれん)270,000
連結2年目の開始仕訳(①~③を合体)

連結2年目の修正仕訳を作るのがこの問題のゴールなので、これを表に転記していきます。

科目個別財務諸表
P社
個別財務諸表
S社
修正・消去
借方
修正・消去
貸方
連結財務諸表
商品10,0008,000
のれん270,000
S社株式750,000750,000
資本金当期首残高1,750,000600,000600,000
資本剰余金当期首残高200,000100,000100,000
利益剰余金当期首残高650,000275,000170,000
非支配株主持分
当期首残高
390,000
問題の表より抜粋

さらに「貸倒引当金」の仕訳と「前期末の未実現利益の消去」の仕訳も引継ぎます。
この2つも前年の仕訳のうち「損益項目」は「利益剰余金当期首残高」に振り替えます。

(借方)(貸方)
(貸倒引当金)5,000(貸倒引当金繰入)5,000
利益剰余金当期首残高
(非支配株主に帰属する当期純利益)2,000
利益剰余金当期首残高
(非支配株主持分当期首残高)2,000
⑥貸倒引当金の引継ぎ
(借方)(貸方)
(売上原価)60,000
利益剰余金当期首残高
(商品)60,000
(非支配株主持分当期首残高)24,000(非支配株主に帰属する当期純利益)24,000
利益剰余金当期首残高
⑧連結1年目の未実現利益の消去(アップストリーム)の引継ぎ

ここからは、連結1年目と同じように解いていきます。

のれん償却

(借方)(貸方)
(のれん償却)30,000(のれん)30,000
のれん償却の仕訳

「のれん償却」は、表の中の項目だと「販売費及び一般管理費」になるので記入します。

科目個別財務諸表
P社
個別財務諸表
S社
修正・消去
借方
修正・消去
貸方
連結財務諸表
販売費及び一般管理費357,000233,75030,000
問題の表より抜粋

子会社の当期純損益の振替

科目個別財務諸表
P社
個別財務諸表
S社
修正・消去
借方
修正・消去
貸方
連結財務諸表
当期純利益175,000100,000
問題の表より抜粋

表より、S社の当期純利益は100,000円です。
このうち40%が「非支配株主持分」なので、
100,000円×40%=40,000円
ですね。

(借方)(貸方)
(非支配株主に帰属する当期純利益)40,000(非支配株主持分当期変動額)40,000
連結2年目の子会社の純損益の振替

これを表に記入していきます。

科目個別財務諸表
P社
個別財務諸表
S社
修正・消去
借方
修正・消去
貸方
連結財務諸表
非支配株主に
帰属する当期純利益
40,000
非支配株主持分
当期変動額
40,000
問題の表より抜粋

子会社の配当金の修正

問題文「4.S社は、当期より繰越利益剰余金から50,000円の配当金を出している。」より

親会社への配当金は
50,000円×40%=30,000円

「非支配株主持分」への配当金は
50,000円×40%=20,000円
です。

(借方)(貸方)
(受取配当金)30,000
※営業外収益
(剰余金の配当)50,000
(非支配株主持分当期変動額)20,000
子会社の配当金の修正
ともちよ
ともちよ
科目個別財務諸表
P社
個別財務諸表
S社
修正・消去
借方
修正・消去
貸方
連結財務諸表
営業外収益400,000250,00030,000
剰余金の配当100,00050,00050,000
非支配株主持分
当期変動額
20,00040,000
問題の表より抜粋

内部取引の相殺・消去(債権・債務)

問題文「5.前期よりS社はP社に商品を販売している。当期のS社からP社への売上は900,000円
「7.S社のP社に対する売掛金残高は(中略)当期末187,500円だった。(後略)」
より、内部取引を相殺・消去します。

利益に影響する項目
(損益項目)
非支配株主持分の仕訳
手形取引あり
未実現利益の消去
(商品売買など)
あり
貸倒引当金あり
固定資産の売却あり
株式の取得あり
子会社の利益あり
債権・債務の相殺消去
(売掛金など)
なし
売掛金など内部取引は「非支配株主持分」を計算しません
(借方)(貸方)
(売上高)900,000(売上原価)900,000
内部取引の相殺消去
(借方)(貸方)
(買掛金)187,500(売掛金)187,500
内部取引の相殺消去

これを表に転記していきます。

科目個別財務諸表
P社
個別財務諸表
S社
修正・消去
借方
修正・消去
貸方
連結財務諸表
売掛金208,500188,000187,500
買掛金307,500205,000187,500
売上高2,300,0001,200,000900,000
売上原価1,700,000875,000900,000
問題の表より抜粋

貸倒引当金の調整(アップストリーム)

問題文「7.S社のP社に対する売掛金残高は前期末125,000円、当期末187,500円だった。なお、S社は売上債権期末残高に4%の貸倒引当金を差額補充法により設定している。」より、貸倒引当金の修正をします。

連結2年目開始時点の貸倒引当金は、こうなっていましたね。

(借方)(貸方)
(貸倒引当金)5,000(貸倒引当金繰入)5,000
(利益剰余金当期首残高)
(非支配株主に帰属する当期純利益)2,000
(利益剰余金当期首残高)
(非支配株主持分当期首残高)2,000
⑥貸倒引当金の引継ぎ

前期末の売上債権は125,000円、今期末は187,500円なので、その4%を貸倒引当金に繰り入れます。
(差額補充法)

ともちよ
ともちよ

2,500円×40%=1,000円
が「非支配株主持分」ですね。

(借方)(貸方)
(貸倒引当金)2,500(貸倒引当金繰入)2,500
※損益項目
(非支配株主に帰属する当期純利益)1,000(非支配株主持分当期変動額)1,000
貸倒引当金の調整(アップストリーム)

連結1年目の引継ぎと併せて、これを表に転記します。
貸倒引当金繰入は「販売費及び一般管理費」に計上します。

科目個別財務諸表
P社
個別財務諸表
S社
修正・消去
借方
修正・消去
貸方
連結財務諸表
貸倒引当金12,00016,0005,000
2,500
販売費及び一般管理費357,000233,75030,0002,500
利益剰余金当期首残高650,000275,000170,000
2,000
5,000
非支配株主に
帰属する当期純利益
40,000
1,000
非支配株主持分
当期首残高
390,000
2,000
非支配株主持分
当期変動額
20,00040,000
1,000
問題の表より抜粋

前期末の商品に含まれる未実現利益の消去(アップストリーム)

前期末の商品について仕分けしていきます。

まずは連結1年目の修正仕訳の引継ぎです。

(借方)(貸方)
(売上原価)60,000
(利益剰余金当期首残高)
(商品)60,000
(非支配株主持分当期首残高)24,000(非支配株主に帰属する当期純利益)24,000
(利益剰余金当期首残高)
⑧連結1年目の未実現利益の消去(アップストリーム)の引継ぎ

期末商品の計算(アップストリーム)では「書いてないルール」が発動します。

・⑦前期末の商品は”すべて販売された”と考え、未実現の利益を修正仕訳する

前期末の商品60,000円はすべて売れたと考え、未実現の利益を修正仕訳します

ともちよ
ともちよ
(借方)(貸方)
(商品)60,000(売上原価)60,000
※損益項目
(非支配株主に帰属する当期純利益)24,000(非支配株主持分当期変動額)24,000
連結1年目で消去した未実現利益を、連結2年目に修正します

同じように、表に転記していきます。

科目個別財務諸表
P社
個別財務諸表
S社
修正・消去
借方
修正・消去
貸方
連結財務諸表
商品775,000490,00060,00060,000
売上原価1,700,000875,000900,000
60,000
利益剰余金当期首残高650,000275,000170,000
2,000
60,000
5,000
24,000
非支配株主に
帰属する当期純利益
40,000
1,000
24,000
非支配株主持分
当期首残高
24,000390,000
2,000
非支配株主持分
当期変動額
20,00040,000
1,000
24,000
問題の表より抜粋

当期末の商品に含まれる未実現利益の消去(アップストリーム)

当期末の商品にも、簿記の「書いてないルール」が発動します。

・⑧今期末商品は”すべて売れ残った”と考え、未実現利益を消去する。

問題文
「6.P社の(中略)当期末商品棚卸高のうち225,000円はS社から仕入れたものである。」
「5.(中略)前期と当期の売上総利益率はともに30%である。」より、

225,000×30%=67,500円
が未実現利益なので、これを消去します。

ともちよ
ともちよ
(借方)(貸方)
(売上原価)67,500
※損益項目
(商品)67,500
(非支配株主持分当期変動額)27,000(非支配株主に帰属する当期純利益)27,000
連結1年目で消去した未実現利益を、連結2年目に修正します

これを表に転記します。

科目個別財務諸表
P社
個別財務諸表
S社
修正・消去
借方
修正・消去
貸方
連結財務諸表
商品775,000490,00060,00060,000
67,500
売上原価1,700,000875,00067,500900,000
60,000
非支配株主に
帰属する当期純利益
40,000
1,000
24,000
27,000
非支配株主持分
当期変動額
20,000
27,000
40,000
1,000
24,000
問題の表より抜粋

連結2年目の仕訳まとめ(答え)

これですべての修正仕訳が終わりました。
あとは「個別財務諸表P社+個別財務諸表S社」から「修正・消去」欄を足し引きして完成です。

・借方科目(売掛金など)の「修正・消去 借方」…+(プラス)
・借方科目(売掛金など)の「修正・消去 貸方」…-(マイナス)
・貸方科目(非支配株主持分など)の「修正・消去 借方」…-(マイナス)
・貸方科目(非支配株主持分など)の「修正・消去 借方」…+(プラス)
ともちよ
ともちよ
科目個別財務諸表
P社
個別財務諸表
S社
修正・消去
借方
修正・消去
貸方
連結財務諸表
貸借対照表
売掛金208,500188,000187,500209,000
貸倒引当金12,00016,0005,000
2,500
20,500
商品775,000490,00060,00060,000
67,500
1,197,500
S社株式750,000750,000
のれん270,00030,00024,000
資産合計1,473,500601,000
買掛金307,500205,000187,500325,000
資本金1,500,000600,000
資本剰余金400,000100,000
利益剰余金900,000425,000
非支配株主持分
負債・純資産合計3,107,5001,931,000
損益計算書連結損益計算書
売上高2,300,0001,200,000900,0002,600,000
売上原価1,700,000875,00067,500900,000
60,000
1,682,500
販売費及び一般管理費357,000233,75030,0002,500618,250
営業外収益400,000250,00030,000620,000
営業外費用170,00075,000
当期純利益175,000100,000
非支配株主持分に
帰属する当期純利益
親会社株主に
帰属する当期純利益
株主資本等変動計算書連結株主資本等
変動計算書
資本金当期首残高1,750,000600,000600,0001,750,000
資本金当期末残高1,750,000600,000600,0001,750,000
資本剰余金当期首残高200,000100,000100,000200,000
資本剰余金当期末残高200,000100,000100,000200,000
利益剰余金当期首残高650,000275,000170,000
2,000
60,000
5,000
24,000
722,000
剰余金の配当100,00050,00030,000100,000
親会社株主に
帰属する当期純利益
175,000100,000
利益剰余金当期末残高450,000212,500
非支配株主持分
当期首残高
24,000390,000
2,000
368,000
非支配株主持分
当期変動額
20,000
27,000
40,000
1,000
24,000
18,000
非支配株主持分
当期末残高
71,000457,000386,000
単位:円
ともちよ
ともちよ

まとめ 問題を解くのは2年目の開始仕訳を完成させてから

連結会計は簿記2級のラスボスで、毎年多くの受験者が苦戦します。
逆に言えば、ここを攻略すれば合格したようなものです。

連結会計(アップストリーム)の場合、以下のステップで解いていきます。

Step1 支配獲得日の仕訳

Step2 連結1年目の仕訳
    ①開始仕訳
    ②のれん償却
    ③子会社の当期(連結1年目の)純損益の振替
    ④子会社の配当金の修正
    ⑤内部取引の相殺・消去(債権・債務)
    ⑥貸倒引当金の調整
    ⑦前期末の商品に含まれる未実現利益の消去
    ⑧当期末の商品に含まれる未実現利益の消去
    ⑨固定資産を売却した未実現利益の消去
    ※③,④,⑥~⑨がアップストリームの場合、「非支配株主持分」も仕訳する

Step3 連結2年目の仕訳
    ①開始仕訳(Step2の①~④を合体
    ②のれん償却
    ③子会社の当期(連結2年目の)純損益の振替
    ④子会社の配当金の修正
    ⑤内部取引の相殺・消去(債権・債務)
    ⑥貸倒引当金の調整
    ⑦前期末の商品に含まれる未実現利益の消去
    ⑧当期末の商品に含まれる未実現利益の消去
    ⑨固定資産を売却した未実現利益の消去
          ※③,④,⑥~⑨がアップストリームの場合、「非支配株主持分」も仕訳する

さらに問題文に書いてないルールもあるので、頭に入れてから本試験に挑む必要があります。

・①前年の仕訳のうち「損益項目」は「利益剰余金当期首残高」に振り替える
・⑦前期末の商品は”すべて販売された”と考え、未実現の利益を修正仕訳する
・⑧今期末商品は”すべて売れ残った”と考え、未実現利益を消去する。

アップストリームは「非支配株主持分」も忘れずに計算します。

利益に影響する項目
(損益項目)
非支配株主持分の仕訳
手形取引あり
未実現利益の消去
(商品売買など)
あり
貸倒引当金あり
固定資産の売却あり
株式の取得あり
子会社の利益あり
債権・債務の相殺消去
(売掛金など)
なし

ここまでよくぞ頑張りました。

最後まで読めるあなたは、合格までたどり着くだけのガッツがありますね。
間違いなく合格者予備軍です。

何回も見返して、どの仕訳がどこに連動するのか確認してみてくださいね。

どうしても無理ならプロを頼ろう

ともちよ
ともちよ

連結会計は良く出るうえに配点も高いため、避けては通れません。

とはいえ、理解するにはかなりの時間が必要になります。

・もっと深く理解したいのに時間が足りない…
・仕事のスキマ時間しか勉強できない…

そんなときはプロの力を借りるのも1つの手です。

オンライン資格講座の【スタディング STUDYing】なら

・通勤中や昼休みなど”スキマ時間”を有効活用
・スマホがあればどこでも学べる
・受講者数20万人越え
・脳科学に基づくいた便利なツールも充実

などなど、低予算でしっかりと理解を深めながら学習できますよ。

とくに日々の生活に忙しく、勉強時間を確保しづらい

・社会人
・主婦
・就活中の大学生

こそおススメです。

簿記は就活はもちろん、転職家計簿にも応用がきく超便利スキルなので、サクッと取ってしまえば今後大きな味方になってくれますよ。

タイトルとURLをコピーしました